和の匠探訪記記事

和の匠探訪記vol.2「椎茸の匠」

和の匠探訪記タイトル

椎茸の匠

齋藤 勇人 さん

椎茸の匠、齋藤勇人さん

  • 佐倉きのこ園 園長
  • 千葉県佐倉市
  • 主要な生産品:椎茸、干し椎茸(防虫剤、成長促進剤等不使用)
  •  


 秋の味覚の代表格といえばキノコ。和の逸品掘り出し隊では、旬の秋はもちろん、年中美味しいキノコを探してお届けしています。

 日本にはたくさんの美味しいキノコがありますが、数あるキノコの中でも人気ナンバーワンなのが椎茸ではないでしょうか。焼いたり煮たりして食べることはもちろん、ダシとしても使ってもその旨味は絶品で料理の美味しさを引き上げてくれます。

 そんな椎茸の中で、大人はもちろん、椎茸嫌いの子供でも美味しい!という評判の椎茸を作られている「佐倉きのこ園」の園長、齋藤勇人(さいとうはやと)さんを訪問し、お話を聞いてきました。


「椎茸嫌い」がスタート
佐倉きのこ園外観
 齋藤さんは佐倉市で米や野菜などを生産している農家の8代目で、お父さんの代から兼業農家に転じました。
 実は齋藤さんは大の椎茸嫌いだったそうで、椎茸を料理する臭いが家中に立ち込めるだけで、気が狂いそうになるほどの苦痛だったそうです。

 斎藤さんは当初、家業である農業には携わらずサラリーマンをしていました。そんな齋藤さんに転機が訪れたのが30歳の時、新聞のある記事が目に留まったことがきっかけでした。
 それは「椎茸の菌床栽培の画期的な技術」に関する記事です。
 椎茸嫌いだった齋藤さんが、椎茸の記事に注目したのには理由がありました。
 当時、佐倉市は都市開発が盛んで、盛んに農地が売却されて建設ラッシュに沸いていたといいます。需要が多かった建築資材を扱う商いをしていたお父さんは、養護学校の卒業生や知的障害者やお年寄りを従業員として積極的に雇用していました。しかし、そうした方々にとって建築資材を扱う日々の仕事はかなりの重労働で、負担も大きいものでした。
 改善方法が何かないものかと気にしていた齋藤さんは、この記事を見て椎茸の菌床栽培なら軽作業なので従業員の負担も少なくなるのではないかと思いつきます。
 障害者や高齢者の雇用環境改善のため、ご自身が大嫌いだった椎茸の栽培に目を向けたのです。
 そうした想いをお父さんに話したところ、お父さんはある一冊のスクラップブックを見せてくれました。そこには椎茸栽培に関する記事がビッシリと並び、「実は俺も椎茸栽培がしたかったんだ!」というお父さんの驚きの一言が。そこから親子二人三脚での椎茸栽培が始まります。

キノコの栽培風景
うまい!と唸った椎茸との出会い
 まずは栽培方法の勉強をしようということで、ある椎茸農家を訪ねました。実際に栽培している場所を見ると、とても薄暗くジメジメした感じで、これは環境が良くないと思ったそうです。お土産にいただいた椎茸を口にしてみても、残念ながら美味しいと感じませんでした。
 さらに何ヶ所か見学に行ってみましたが、結果は納得のいくものではなく、途方に暮れる日々でした。そんな中に訪れたのが、千葉県流山市の農園です。
 その栽培場は明るく清潔で、風通しもよく、まさに森の中にいるような環境の中で椎茸が栽培されていました。恐る恐る試食してみると驚くほど美味しく、椎茸嫌いの自分が椎茸に魅了されたのを感じたそうです。
 その時に、美味しい椎茸を栽培するうえで大切な3つの条件を農園の方から教わりました。
  • 1.新鮮は「空気」・・椎茸は酸素を吸って、二酸化炭素を吐くので、新鮮な酸素が必要
  • 2.適切な「温度」・・人間と同じ温度帯を好む。日中は温かく、夜は涼しい温度差が必要
  • 3.良質な「水」・・・・椎茸の80%は水分なので与える水が大事
 各地の生産者を見学し続ける中でようやく出会った椎茸栽培の秘訣。自然豊かな森にできるだけ近い環境こそ、椎茸の栽培には望ましいということを学んだ齋藤さんの挑戦がいよいよ始まります。それは平成6年、齋藤さん30歳の新たなチャレンジでした。

椎茸の栽培風景
天然水のみ。「長生き椎茸」
 生まれて初めて椎茸を美味しい!と感じた齋藤さん。この椎茸をどうしても作りたい、との思いで平成6年に「佐倉きのこ園」を設立します。
 ようやく完成した椎茸を市場へ卸すことからスタートし、齋藤さんが研究を重ねて作った「長生き椎茸」は、安心で安全かつ美味しいとの評判を呼び、市内30校の学校給食への供給など販売を拡大していきます。出荷量の増加に伴い設備も増設し、年間55トンの生産量にまで成長しました。
 「長生き椎茸」の栽培には、開業時に学んだ椎茸栽培に必要な「3つの条件」を盛り込んだ「5つの特長」があります。
1、森のような環境づくり
 取材に訪れたのは10月の夕方でしたが、それでも栽培場のハウスの中は明るく、風通しも良い環境でした。椎茸にとって心地よい、「森のような環境づくり」を常に心がけています。
地下水で洗浄中の椎茸
2、豊富で良質な天然水
 椎茸の80%は水分なので良質な水が求められます。佐倉きのこ園の敷地には井戸が掘られ、天然の豊富な地下水に恵まれいます。地下50mから湧き出る地下水は毎年検査を行ない、飲料水として認められるほどの良質な水です。
3、安心で安全な無添加栽培
 椎茸は野菜に比べても与えられたものを全て吸収してしまう性質のため、雨水や土壌などに不純物が混ざっていれば、それらをすぐに取り込んでしまうそうです。そのため、雨水はもちろん、殺虫剤などは一切使用せず、害虫駆除やカビを洗い流す場合も、スタッフが毎日手作業で行っています。
 また生育期間を短縮し椎茸の成長を促す成長促進剤も使用しません。成長促進剤に変わって活用されるのが、地下50mから豊富に湧き出る良質な天然水です。
 収穫後の菌床(椎茸を栽培する培地)を天然水に1日浸水させ、温度を変化させて刺激を与えることによって、次に菌床から出てくる椎茸の生育を薬剤などに頼ることなく、自然の恵みによって促すことができるそうです。
 「椎茸栽培は害虫とカビとの戦い」と言われるそうですが、手間暇惜しまぬスタッフの丁寧な手作業と自然の恵みである天然水によって安心で安全な椎茸の生産が行われています。放射能検査も定期的に実施していますが、検出されておりません。
佐倉きのこ園のおすすめいろいろ
4、菌床栽培
 菌床栽培とは、ブナ、ナラ、クヌギなどのおがくずと、栄養分として米ぬかを合わせたものを培養袋に入れて作った培地(菌床)を利用して栽培する方法です。培地(菌床)に植菌機で菌種を注入します。
 培地は小さな四角い建築資材のブロックのような形ですが、おがくずでつくられているためとても軽く、障害者向けの軽作業として齋藤さんが椎茸栽培に目を向けられたのもうなずけます。
5、巧みな菌まわし
 椎茸栽培は「菌床栽培」以外に「原木栽培」(木に直接菌種を植え付ける)がありますが、どちらがより美味しい椎茸ができるのでしょうか。聞きたかった疑問を齋藤さんになげかけてみました。
 齋藤さん曰く、椎茸の味に大きな影響を与えるのは栽培方法というより菌種(菌の種類)であって、菌種には夏菌、冬菌、中低温菌など様々なものがある。それらを季節に応じて見極め、使い分ける技術(菌まわし)が難しく最も大切で、「長生き椎茸」には、肉厚で甘みのある菌種を厳選して使っている、と教えてくれました。

特選干し椎茸
今後も生産量より質を大事に
 椎茸作りを始めて23年を経た今、齋藤さんに今後の抱負を聞いてみました。
 「これからも納得できる良い椎茸を作り続け、世に送り出していきたいという気持ちだけなので、生産拡大などは考えておりません。生産を拡大しますと、しっかりとした品質管理や栽培における菌種の調整が行き届かなくなってしまいます。手間暇をかけた安心・安全な生産には、これからもこだわって行きたいと思います。この美味しい椎茸を私たちが生産したんだという商品に対する自信がありますから、多くの方に「長生き椎茸」の味を知って欲しいと思います。」とにこやかにお話しいただきました。
 最後に、齋藤さんがおすすめする「長生き椎茸」の美味しい食べ方を教えていただいたので、皆様にお伝えします!

サッとあぶって塩味で!
1、椎茸は、石づき(ジク)を切り落とし傘とジクに分けます。
2、傘の内側を上に向けて焼きます。
3、椎茸のひだの面に旨味成分が水滴となって浮かび上がてきます。
4、水滴が出てきたら塩を振って旨味をこぼさないようにお召上がりください。
※石づき(ジク)も焼いて美味しく食べられます。手でさいて炒めたり味噌汁の具にしても風味よく召し上がれます。

 いかがでしたか?椎茸好きはもちろん、椎茸が苦手な方もぜひ一度、「長生き椎茸」をお試しください。もしかしたら椎茸が大好きになるかもしれませんよ。
 椎茸の匠・齋藤さんが辿り着いた、納得の「長生き椎茸」の美味しさと香りを、「匠が作った和の野菜 詰め合わせBOX」にてお届けさせていただきます。どしどしご注文をお待ちしています。
(記事:洋一)

匠の技に歴史あり、匠の腕に想いあり、和の逸品に匠の妥協なし

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